蘇州評弾、日本にて評価を得る

 文筆・写真:呉語

 

原文:中国評弾ネット
 

1015日の晩、場所は日本の東京の、演芸のメッカである国立演芸場。中国の評弾と日本の講談による合同公演がまもなく始まる。袁小良、王瑾、王池良という、蘇州評弾博物館、蘇州評弾学校及び蘇州評弾団を代表する評弾のスターたちは皆、数十年の舞台経験が有り、上海大劇院(オペラハウス)、田舎の小規模な茶館、国家指導者が集まる北京の中南海、または欧米や東南アジア、いずれの公演も手馴れたものなのだが、今回はさすがに気持ちが落ち着かない。その理由として、先ず、これまでが文化交流あるいは中国系の人々が相手であったのに対して、今回は日本の一般人向けにチケットを販売するのだが、その人たちは皆、中国語が分からない。果たして受け入れてくれるのだろうか?次に、セリフ全部が日本語の字幕付きだが、これは、自由に高座を務めることに慣れている芸人にとっては試練である。また、日本と中国には文化的な差異が有り、果たして日本語訳は的確なのか?最後に、彼らは高座に上がる前に聞かされた決まり事に愕然とした。それは、楽屋は畳敷きで靴を脱ぐのだが、舞台でも靴を履いてはならないのだ。何度も交渉したのだが、これには通常非常に礼儀正しく丁寧なもてなしをする日本人でも非常にこだわり、どうにもならない。靴を履かずに高座に上がることが日本人の何百年にもわたる伝統であり、この舞台がまさに畳敷き同様、非常に神聖な場であり、靴で上がることは芸への冒涜なのである。それならば郷に入れば郷に従えである。そこで、彼ら三人は、評弾界で初めて裸足で書を読むという創造的行為に出たのである。日本側もゲスト出演に配慮して評弾をこの日の番組の一番奥へ上げてくれた。それまでの六席では日本でも名の通った実力有る講談家が高座に上がり、皆熱気溢れた口演であり、仲トリの宝井琴梅先生は国宝に匹敵すると言って過言ではない文化の伝承者であり、高い評価を受け、徳望も高い。琴梅先生が拍手の中で舞台を下りると、いよいよ蘇州評弾の出番となった。

宝井琴梅先生を初めとする講談家や楽屋係など十数名は、三名の評弾家に向かって一礼しながら「ご苦労様です」と声を掛ける。とりわけ琴梅先生と日中講談交流仲間の会事務局の福島守氏は、期待のまなざしで三名を眺めていた。というのも、彼らは今回の公演のために多大なる心血を注いでいる。一年余りの間に福島氏は、評弾を視察し中国評弾界を代表しうる芸人と演目を招請するために、東京と蘇州の間を7,8回往復している。気力面や金銭面ばかりでなく、とりわけ精神的なプレッシャーを負っていた。日本国内でも反対する人も多く、お笑い種と思っている人もいる。三人の評弾家は互いに励ましあいながら、先ずは王池良が高座に上がり、評話「三国志の抜き読み 長坂橋の戦い」を読み始めた。趙子龍が大見得を切り朗誦する場面に入るや客席いっぱいに拍手が鳴り響く。続いて馬の鳴き声や走る音、張飛や曹操が見得を切る場面でも大受けで、そして最後に張飛が“わーーー”と大声で叫ぶ場面では割れるような拍手の中で高座を下りた。この時には、袁小良、王瑾も半ばほっとした。次に彼らが拍手に迎えられ高座に上がり深々と一礼をすると、場内はシーンと静まった。トリの一席なので、その場にいた芸人たちが息を張り詰め、この二人が如何に演じ始めるかに関心が集まった。思いがけず、彼らは語学的才能と超人的な記憶力を活かし、通訳から教わったばかりの日本語を用いて開口一番、流暢な日本語で「私は袁小良(王瑾)です。」という自己紹介、そして「こちらは妻(夫)の王瑾(袁小良)です」と相手方の紹介、さらに「どうぞよろしくお願いします」と型どおりの挨拶言葉を述べた。わずか1分半くらいのマクラを振っただけなのだが、なんと天地を揺るがす拍手と歓声を得ることが出来た。そして本題に入ると高座も佳境に入った。袁小良の唸(うな)る楊(振雄)節、王瑾の(秀山)節、そして武大郎、潘金蓮、武松の演じ分けに客席は酔い痴れた。とりわけ潘金蓮が武松を見初める場では、王瑾は工夫を凝らし“恰好良い”、“イケメン”という日本語を用いたのだ客席は盛り上がり、笑い声、拍手が引きも切らない。一席が終わると、拍手や掛け声が鳴り止まず、20分が非常に短く感じられ、客席を離れる人は一人もいない。進行役と通訳が高座に上がり、質問コーナーとなった。その時間が30分くらい続きカーテンコールとしては最も長いものになった。

続いて場所を大阪に移し、三名は芸に対してさらにより一層の磨きをかけ、地元の人から大阪弁の挨拶用語を学びそれを高座で使うと、客席にとっては望外の喜びとなった。金沢大学の公演では、教授、博士、研究生など数百名を前にして王瑾は流暢な英語で自分自身のこと、演目の内容を説明した。中国の評弾家の教養の高さに日本の教養人からは限りない賞賛が送られた。

三国志は日本でもなじみ深いが、水滸伝はあまり知られていない。今回の公演を通じて日本人に評弾を理解してもらい、傑作を紹介し、その内容に惹かれ、水滸伝全巻を購入しようとする人もいる。さらに評弾の再公演を望んでいる人も多いし、長編物の連続公演を望む声も有る。蘇州色の濃い軟らかい言葉は心地良く聞える。蘇州評弾は実に美しい。

 

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裸足で演ずる
 

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客席からの質問に答える
 

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大阪公演を終了後
 

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日本式緞帳のもとで開演を待つ客席
(2008年10月16日国立演芸場公演)
 


 

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国立演芸場にて仲入りで休む観客
(2008年10月16日公演)
 

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日本側と記念撮影

 

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演者紹介
 

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金沢大学公演
 

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国宝に匹敵する文化の伝承人
 宝井琴梅先生
 

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日本側講談家勢揃い
 

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日本式歓迎宴
 

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日本語と中国語の字幕

 

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日本側の質問に答える王瑾
 

 

(以上の記事は袁小良氏及び中国評弾ネットの御了解のもとに日本語訳を行い掲載させて頂きました)