|
解説と字幕 |
講談は、「一人の講談家が高座に上がり、先ずマクラを振り、その日の客席の様子を探り、その後に本題に入って行く話芸で、そして、講談家が1つの筋書きを第三者として読んで行き、時々その中の複数の登場人物を演じ分ける話芸」と定義出来る。 ところで、同様な話芸が今回お招きした蘇州評弾である。蘇州方言で演じられ、今回、王池良氏が“評話”を、袁小良と王瑾は“弾詞”を演じその総称が評弾である。前者は基本的には前述の講談の定義とほぼ一致する。他方、後者は上記講談の定義が大前提で、その上に口演者の楽器演奏、唄い調子が追加される。 今から400年前の明朝初期に蘇州では既に評弾が聴かれた。今日でも揚子江下流一帯の各都市に書場と呼ばれる講釈場が存在し、そこではほぼ一年中興行が行われ、半月から一ヶ月、長い場合には3ヶ月同じ演者が長編の連続物を毎日高座にかけそれを楽しみに多くの御常連が釈場通いをしている。今回の三氏もそんな講釈場で口演し、その抜き読みを今回披露してくれる。 |
|
弾詞 水滸伝抜き読み 潘金蓮 袁小良と王瑾 |
水滸伝108人の豪傑の一人武松、景陽岡にて虎退治をし、馬に乗って街中に入って来ると大勢の人が争って武松を一目見ようとする。武松の兄、武大郎は武松と見るや興奮して弟を連れて帰宅し、そこで武大郎の妻、潘金蓮と出会う。「弟はきりっとして勇ましさ溢れる姿は威風堂々なのに、家の人は三寸男の醜さ、どこに兄弟のかけらがあるのやら…」 この中国文学史上高名な悪女には数々の伝説がつきまとう。ただ、水滸伝では、潘金蓮は「清河県の去る金持ちの家に、一人の小間使い」として設定され、「年のころは二十あまり、なかなかの器量よしでしたが、主人がうるさくいい寄るのを、小間使いは奥様にいいつけ。どうしてもいうことをききません。主人はそのために恨み骨髄に徹し、あべこべにこちらから嫁入りしたくをしてやって、武大からは一文の金も取らず、ただで彼に娶らせました。」※とある。 今回は袁小良と王瑾がその出会いの場を、登場人物(武松、武大郎、潘金蓮の3人)の「地の部分」と「台詞」、「唄い回し」という形式を縦横に駆使して皆様にお伺いします。 ※:「完訳 水滸伝(三)芳川幸次郎・清水茂訳(岩波文庫)、45頁 |
| 担当 | 登場人物 | 中国語 | 日本語 |
弹词 「水浒传」选回《武松.叔嫂初逢》 |
弾詞 「水滸伝」より「武松、兄嫁との出会い」 |
||
| 袁小良、王瑾 | 袁小良、王瑾 | ||
| 袁小良 | 表 (地の文) |
武松景阳岗打虎,走马游街,弟兄相会。 | 武松、景陽岡で虎退治を果たし、 馬で街に出ると、実兄に出会いました。 |
| 武大郎未想到自已的好兄弟是打虎英雄。 | 武太郎、可愛い実弟が虎退治の英雄とは、 予想外でした。 |
||
| 心里怎不高兴。 | 心中嬉しくて仕方ない。 | ||
| 现在领了好兄弟直往家中而来。 | そのまま、可愛い弟を連れて、 家まで戻って来ました。 |
||
| 袁小良 | 武大郎 | 「我的好兄弟啊!」 | 「おい、武松よ! 」 |
| 王瑾 | 武松 | 「哥哥!」 | 「兄貴!」 |
| 袁小良 | 武大郎 | 「跟做阿哥走啊!」 | 「俺について来い!」 |
| 王瑾 | 武松 | 「嗯是!」 | 「うん!」 |
| 袁小良 | 表 (地の文) |
武松拿阿哥这付烧饼担往肩胛上一挑, 回过身来拿大郎臂膀一把抓牢。 |
武松、兄の饅頭の天びん棒を担ぐや、一回り。 そして、兄の腕をぎゅっと握りました。 |
| 王瑾 | 武松 | 「啊哥哥,走呀!」 | 「兄貴、行こう!」 |
| 袁小良 | 武大郎 | 「走呀!」 | 「行こう!」 |
| 王瑾 | 武松 | 「走呀!」 | 「それ!」 |
| 袁小良 | 武大郎 | 「走呀!」 | 「それ!」 |
| 袁小良 | 表 (地の文) |
(两人大笑)哈ー、弟兄两人无多片刻, 进紫石街已到家门口。 |
ハハハ…、兄弟二人まもなく、 紫石街を入ると、既に家の門の前です。 |
| 袁小良 | 武大郎 | 「好兄弟!」 | 「武松!」 |
| 王瑾 | 武松 | 「哥哥!」 | 「兄貴!」 |
| 袁小良 | 武大郎 | 「做阿哥的家就在这里!」 | 「ここが我が家だ!」 |
| 袁小良 | 表 (地の文) |
武松脚步立停,拿付担子往地上一歇, 头抬起来一看么,一门一闼,一楼一底。 |
武松立ち止まり、天びん棒を下ろして一息入れ、 見上げると、入口と窓が一つずつ、一階と二階。 |
| 帘子下好,清清爽爽, 看上去阿哥日子过得还不错。 |
きちっとしたすだれ掛け、こざっぱりとして、 兄貴の暮らしぶり、先ずは良さそうだ。 |
||
| 王瑾 | 武松 | 「哥哥,到了么?」 | 「兄貴、着いたのか?」 |
| 袁小良 | 武大郎 | 「到哉。」 | 「ああ、着いた」 |
| 袁小良 | 表 (地の文) |
大郎正要想碰门,再一想,慢。 | 武大郎、門に手をかけようとして、考えた、 待てよ。 |
| 兄弟几年不回,我已讨了家小, 他还不知道,应该告诉他。 |
弟は久しぶりの帰宅で、俺の嫁のこと、 まだ知らない、当然言うべきだ。 |
||
| 大郎是老实人,怕难为情,叫我怎么开口? | 真面目な武大郎のこと、きまりが悪そうで、 俺はどう切り出すべきか? |
||
| 袁小良 | 武大郎 | 「好兄弟!做阿哥有椿要紧的事还未讲给你听」 | 「武松、大事な話をしていなかった」 |
| 王瑾 | 表 (地の文) |
啥事情介?弟兄三年未碰头, 怎么阿哥见陌生了? |
何のこと?三年ぶりでも、赤の他人じゃない。 |
| 有话要讲,面孔涨得煊红? | 言えば良い。顔が膨み、赤くなった? | ||
| 王瑾 | 武松 | 「哥哥,什么事?」 | 「兄貴、何だい?」 |
| 袁小良 | 武大郎 | 「喏!就是做阿哥已经讨了家小哉!」 | 「俺、実は嫁をもらったんだ!」 |
| 王瑾 | 武松 | 「喔!哥哥有了嫂嫂么?」 | 「おう!兄貴、嫁さんがいるのか?」 |
| 袁小良 | 武大郎 | 「哎—,是的,有了嫂嫂哉」 | 「まあな、実はそうなんだ、嫁がいるんだ」 |
| 王瑾 | 表 (地の文) |
这是喜事?!阿哥人生得矮小, 面孔又是丑陋,我想今生今世讨不着家小哉, |
スゴイな?!この兄貴、生来背が低く、 顔も醜く、一生嫁は来ないと俺は思っていたが、 |
| 万万想不到,三年未曾碰头,家小已讨好。 | まったく予想外で、 三年見ぬ間に、兄貴に嫁が来た。 |
||
| 唉!三年来我一直为你担心, 我不在你身边,生怕你被人家欺瞒。 |
ふっ!三年来ずっと心配してたんだ、 俺がいないとあんた、騙されないかと。 |
||
| 既然现在有嫂嫂在服待你,我也可以放心了。 | 今、嫁さんがあんたの世話をしている、 俺も安心したよ。 |
||
| 阿哥从小把我领大,我当他父亲一样看待, | 兄貴は、俺を小さい時から育ててくれて、 まさに父親同然で、 |
||
| 那么这位嫂嫂我应该象自已的娘一样敬重。 | それなら、俺はこの兄嫁を、 実母と同様に、大切にすべきだ。 |
||
| 王瑾 | 武松 | 「啊哥哥,有了嫂嫂?这真是天大地大的喜事, 恭喜哥哥,贺喜哥哥!」 |
「兄貴に嫁さん?大したもんだ。 おめでとう、良かったな!」 |
| 袁小良 | 武大郎 | 「喔唷!难为情煞了,难为以情煞了。 好兄弟,我来叫你嫂嫂开门」 |
「なんだよ、まったく、気恥ずかしいな。 おい、あいつに門を開けさせるぞ」 |
| 王瑾 | 武松 | 「嗯是!」 | 「うん!」 |
| 袁小良 | 武大郎 | 「大嫂!大嫂!开门呀!」 | 「おーい、お前、開けてくれ!」 |
| 王瑾 | 潘金蓮 | 「来了ーー 忽闻门外叩门声,定是大郎转门庭。 可是大郎回来了?」 |
「あらー、 ふと聞えた門を敲く音。 きっと武大郎のお帰り。本当に戻ったの?」 |
| 袁小良 | 武大郎 | 「蛮准,我转来哉!」 | 「うん、戻ったぞ!」 |
| 王瑾 | 表 (地の文) |
啊呀!今朝怎么回来得这样早? 会不会烧饼生意不好,故早转来? |
まあ、今日はどうしてこんなに早いの? 饅頭の売れ行きが悪かったから? |
| 王瑾 | 潘金蓮 | 「大郎呀!为什么今日回来得如此早呀?」 | 「あんた!何で今日はこんなに早いのさ?」 |
| 袁小良 | 武大郎 | 「大嫂呀!我的好兄弟转来哉!」 | 「あのな、弟が戻って来たんだ!」 |
| 王瑾 | 表 (地の文) |
喔?叔叔回来了!? | え?義弟が戻った!? |
| 这个叔叔我从来未曾见过面。 | この義弟、私は今まで会ったことがない。 | ||
| 但是 对于他的事, 我耳朵里听得老茧都生出来了。 |
でも、もう耳にたこよ。 | ||
| 他们弟兄感情实在好,三年前, 叔叔闯了祸,逃了出去, |
彼ら兄弟仲は良いけれど、三年前、 義弟は災難に出くわし、家を出て、 |
||
| 这三年来他无时无刻不在想自已的兄弟。 | この三年来、 兄は弟のこと、ずっと気にしてた。 |
||
| 不过我在想,你们弟兄感情虽然好, 也没有什么大稀奇, |
でも私思うに、あんた方兄弟仲良しだけど、 それもさして珍しくはない、 |
||
| 你武大郎称到三寸丁,人矮得一点点。 | 武大郎、あんたのあだ名は三寸男、 ほんとにちっちゃい。 |
||
| 兄弟再好,阿哥三寸, 兄弟顶多二寸,二寸半是碰足顶了。 |
弟は高くたって、兄が三寸だから、 せいぜい二寸、二寸半あればまだマシ。 |
||
| 不过今天回来,当然是椿喜事。 | でも、今日は帰って来たんだから、 もちろん、私も嬉しい。 |
||
| 王瑾 | 潘金蓮 | 「啊大郎,叔叔回来了么?」 | 「あんた、義弟が帰って来たの?」 |
| 袁小良 | 武大郎 | 「转来了!」 | 「そうだ!」 |
| 王瑾 | 潘金蓮 | 「待我开门来」 | 「待ってて、今開けるから」 |
| 袁小良 | 武大郎 | 「快点呢!」 | 「早くしてくれ!」 |
| 王瑾 | 表 (地の文) |
要紧走过来到门跟首,门闩去脱,门一一。 | 慌てて門までやって来て かんぬきを抜き、扉がギギー。 |
| 人踏到外头,两只眼睛叮牢仔下头在寻。 | 外へ出て、じーっと目線を下げた。 | ||
| 因为人矮不过。 | だって、相手の背丈が低すぎる。 | ||
| 王瑾 | 潘金蓮 | 「大郎!叔叔在哪里?在哪里介?」 | 「あんた、義弟ってどこ?どこなの?」 |
| 袁小良 | 武大郎 | 「大嫂,喏,这个就是我的好兄弟。 好兄弟!这就是你的嫂嫂呀!」 |
「おい、ほら、こいつが俺の可愛い弟だ。 武松!お前の兄嫁だ!」 |
| 王瑾 | 潘金蓮 | 「啊叔——」 | 「あ、義弟ってーーー、」 |
| 袁小良 | 武松 | 「啊嫂——」 | 「義姉さんってーーー、」 |
| 袁小良 | 表 (地の文) |
武松万万没有想到 自已的嫂嫂是这样一位绝色美人。 |
武松、まったく想ってもみなかった。 自分の兄嫁がこんな絶世の美人とは。 |
| 王瑾 | 表 (地の文) |
潘金莲万万没有想到 叔叔是这样一位魁伟丈夫。 |
潘金蓮、まったく想ってもみなかった。 義弟がこんな偉丈夫とは。 |
| 袁小良 | 表 (地の文) |
哥哥如此矮子, 嫂嫂却是婷婷玉立。 |
兄貴は背が低いのに、 兄嫁は柳腰の美人。 |
| 王瑾 | 表 (地の文) |
男人如此丑陋,叔叔却是英俊气慨。 | 家の人が醜男なのに、 義弟は聡明で気概がある。 |
| 袁小良 | 表 (地の文) |
我的阿哥怎么会寻着这样一位美嫂嫂? | なぜ兄貴にこの綺麗な人が来たのだろう? |
| 王瑾 | 潘金蓮 | 「我的男人怎么会有这样一位好兄弟?」 | 「なぜ家の人にこんな色男の弟がいるの?」 |
| 袁小良 | 表 (地の文) |
真是百思不得其解。 | 本当にどう考えても納得できない。 |
| 王瑾 | 表 (地の文) |
令人难以相信! | 信じられない! |
| 袁小良 | 武松 | 「奇呀!」 | 「不思議だなあ!」 |
| 袁小良 | 唱 (唄い回し) |
明是真情却疑是真,瞬间变作梦中人。 | 明らかに事実、でも本当かと疑い、 あっという間に夢心地。 |
| 哥哥是他为人忠厚良心好,惜乎品貌欠端正, | 兄貴は温厚で人は良いが、 惜しむらくは端正な風貌に欠ける。 |
||
| 所以邻里叫他三寸丁。 | そこで、近所では三寸男というあだ名。 | ||
| 我是漂泊江湖已数载, | 俺は各地を流浪転々として既に幾歳、 | ||
| 无时无刻不思亲;只怕哥哥受欺凌。 | 片時も兄貴のことを忘れたことはない。 ただ、いじめられていないか気がかりだった。 |
||
| 为他安危担尽心。 | 兄貴が無事か、心配だった。 | ||
| 他终生一世难婚配,有谁知月下老人行好心; | 兄貴は一生涯伴侶に恵まれないのか、 まさか縁結びの神様の御好意を賜ったとは。 |
||
| 红线牵来美娉婷;阳谷县中出奇闻。 | 赤い糸をたぐるとこんな見目麗しい人。 陽谷県では珍聞奇聞のたぐい。 |
||
| 想嫂嫂是不嫌丑,不嫌贫; | 思うに兄嫁は、 醜さを厭わないし、貧しさを嫌わない。 |
||
| 她毅然下嫁到寒门;真是世上难寻第二人。 | ためらうことなく貧家へ嫁いだ。 まさにこの世では二人として得がたい人だ。 |
||
| 二郎是万千思绪如潮涌,压不住心头激动情。 | 武松は様々な思いが潮の如く込み上がり、 感情の高ぶるのを押さえきれない。 |
||
| 袁小良 | 武松 | 「嫂嫂」 | 「義姉さん」 |
| 王瑾 | 潘金蓮 | 「叔叔」 | 「え、」 |
| 袁小良 | 武松 | 「想俺武松离家数载,俺的哥哥全仗嫂嫂照应、 | 「俺、武松が家を離れて既に幾歳、 兄貴の世話はすべて義姉さん任せ、 |
| 请嫂嫂受俺武松一拜也!」 | 義姉さん、このとおりだ」 | ||
| 袁小良 | 表 (地の文) |
说完卟--。 | と言うと、 |
| 王瑾 | 表 (地の文) |
啊呀!潘金莲吓得跳起来, | まあ!潘金蓮、びっくり仰天して、 |
| 你怎么可以叩头,叫我如何受得了。 | 武松さん、なんで頭下げるの、 まあ、私、どうしたら良いの。 |
||
| 王瑾 | 潘金蓮 | 「啊呀——叔叔万万不敢当的,愚嫂回礼了——」 | 「まあ、武松さん、 滅相もない、 こちらこそ」 |
| 袁小良 | 表 (地の文) |
武大郎笑了出来, | 武大郎、(見ると) 、吹き出してしまう、 |
| 两家头像对石狮子这样面对面跪好。 | 二人とも、まるで一対の狛獅子の様に、 互いに見合いながら、ひざまずいている。 |
||
| 袁小良 | 武大郎 | 「好兄弟呀!嫂嫂自家人,用不着叩头」 | 「武松よ!こいつは身内なんだから、 そこまでしなくても良い」 |
| 袁小良 | 武大郎 | 「大嫂,好兄弟是我从小领大, | 「あのな、武松は俺がここまで大きくしたんで、 |
| 就是向你叩个 把头么也用不着不好意思怕难为情」 |
お前はそこまでして気にするな。」 | ||
| 「大家起来」 | 「ほら、二人とも立ちなさい」 | ||
| 王瑾 | 潘金蓮 | 「嗯是」 | 「そうですね」 |
| 袁小良 | 武大郎 | 「大嫂你阿晓得,今天阳谷县城大街小巷,万人争看的这位打虎英雄是啥人?」 | 「さて、お前、誰なのか知っているか? 今、陽谷県中でうわさの虎退治の勇士」 |
| 王瑾 | 表 (地の文) |
对俚望望,你开心得昏脱哉,我大门也未曾出,怎么知道是啥人? | あんた、興奮気味だけど、私、今日、 出かけてないのに、そんなこと知る訳ない。 |
| 王瑾 | 潘金蓮 | 「大郎,若问打虎英雄么,我家不知」 | 「そう尋ねられても、私、知らない」 |
| 袁小良 | 武大郎 | 「大嫂,不是别人,就是我的好兄弟武松呀!」 | 「あのな、他でもない、実は我が弟、 武松なんだ!」 |
| 王瑾 | 潘金蓮 | 「大郎,你在怎讲?」 | 「え、あんた、今、何言った?」 |
| 袁小良 | 武大郎 | 「就是好兄弟老二呀!」 | 「だから、こいつ、我が家の次男坊だ!」 |
| 王瑾 | 潘金蓮 | 「喔!——叔叔是打虎英雄么?」 | 「まあ、武松さんが虎退治の勇士?」 |
| 袁小良 | 武大郎 | 「是啊!不仅是打虎英雄, 而且现在做了阳谷县衙门里的都头哉!」 |
「そうだよ!それだけじゃなくて、 今度陽谷県庁の組頭になったんだ!」 |
| 王瑾 | 潘金蓮 | 「「喔喔——!!」 | 「まあ!!」 |
| 王瑾 | 表 (地の文) |
「什么?这位英雄气慨的叔叔 就是景阳岗打虎的英雄?!」 |
「え?この英雄気概に溢れた義弟が、 まさに景陽岡で虎を打った勇士? !」 |
| 现在倒要仔仔细细看一看。 | さあ今度はじっくりと見てみよう。 | ||
| 刚才不是已经看过了? | え、たった今既に見たじゃないかって? | ||
| 不!两样的,刚才看的叔叔,现在看的是打虎英雄。 | いいえ!これとあれは別、 さっきは義弟、今は虎退治の勇士。 |
||
| 王瑾 | 唱 (唄い回し) |
她手撂青丝看英雄, | 潘金蓮、黒髪を撫で上げ、勇士を眺め、 |
| 王瑾 | 表 (地の文) |
所以两只煞俏的眼睛—— | (うっとりと武松をみる潘金蓮の)美しく輝く瞳― |
| 袁小良 | 表 (地の文) |
真叫武松,换了第二、三人老早厥倒。 | さすがは武松、 他の男ならとっくに卒倒しているよ。 |
| 王瑾 | 唱 (唄い回し) |
呀!英姿勃勃逞威风。 | あ! 威風堂々たるお姿。 |
| 眨时间胸中小鹿频频撞,桃花玉容带雨红。 | 一瞬胸はドキドキ、桃のかんばせに紅が差す。 | ||
| 王瑾 | 表 (地の文) |
为什么突然面红心跳?啊呀! | なぜ突然顔が赤らみ、心は躍るの?ああ! |
| 实在这位叔叔生得太英俊,太美了!呀!—— | 実際、この義弟、きりっとして、 凄く好い男!ああ! |
||
| 王瑾 | 唱 (唄い回し) |
为什么一母所生竟天地别,身材形容不相同; | 同じ母から生まれたのに、 実は天地の差、体つきの違いは何故なの、 |
| 兄弟是玉树临风气慨宏, | 弟は風に向かう大樹、気概広大なのに、 | ||
| 哥哥是身高三尺背似弓。 | 兄は背丈三寸の猫背。 | ||
| 那里有一缕半丝像亲弟兄。 | どこに兄弟のかけらがあるのやら。 | ||
| 王瑾 | 表 (地の文) |
他们弟兄俩人那里有一丝一毫的相象之处, | あの兄弟二人、 どこに少しは似た所有るのかしら、 |
| 我生得花容月貌, | 私は、花の如く、月の如く 見目麗しき顔(かんばせ) 、 |
||
| 男人如此丑陋, | 夫はあのとおりの醜さだから、 | ||
| 我和这位叔叔倒是匹配勒匹配。 | むしろ、私とこの義弟の方がお似合い。 | ||
| 王瑾 | 唱 (唄い回し) |
自古道叶绿花儿美,佳人配英雄; | 昔からお似合いなのは、 葉の緑に花の美しさ、美人に勇士。 |
| 唉!可怜我,好花枝冷落在草丛中; | あー!哀れ! 美しい花が草むらで粗末に扱われていて、 |
||
| 我美娇妻常伴拙夫公。 | 私の様な見目麗しい妻が、 醜男と連れ添っている 。 |
||
| 王瑾 | 表 (地の文) |
叫大家看看,我们这对夫妻倒底阿配。 | ねえ、私たち夫婦、 本当にお似合い。 |
| 王瑾 | 唱 (唄い回し) |
莫非是狂风吹断了鸳鸯谱, | まさか、 馴れ初めの系図が狂風で破かれたり、 |
| 月下老人发酒疯; | 縁結びの神様が呑み過ぎた訳では? | ||
| 以致于乱点鸳鸯理不通; | それで、 有り得ないご縁が無闇に結ばれ、 |
||
| 断送我终身恨无穷。 | 私の一生を駄目にしてその恨みは限りない 。 | ||
| 她想到伤心怨恨处,泪珠儿滚在眼眶中。 | 悲しき身の上を嘆き悲しんでいると、 涙が目に溜まる。 |
||
| 王瑾 | 表 (地の文) |
啊呀!我怎么好出眼泪, | あー! どうしても涙が出てしまう、 |
| 与叔叔第一次碰头, 被他看见了,怎不要误会。 |
義弟と初めてあったのに、彼に泣き顔を見られて、誤解されたらどうしよう。 | ||
| 唉!事已成事,木已成舟, | ああ!事は既に成り、 木は舟となってしまったのだもの。 |
||
| 嫁鸡随鸡,嫁犬随犬。 | 鶏に嫁げば鶏に従え、 犬に嫁げば犬に従えという。 |
||
| 男人虽未嫁着,这叔叔倒被我该着。 | よき男には嫁げなかったけど、こんな立派な義弟にめぐりあうとは! | ||
| 王瑾 | 唱 (唄い回し) |
她压住心头怨,强装欢笑容; | 彼女、心のうちの恨みをぐっと抑え、 むりやり作り笑顔、 |
| 叔叔啦!你景阳岗打虎建奇功,我们笑在脸庞喜在胸。 | 武松さん!景陽岡での虎退治はお手柄、 私たちは顔に微笑、心に歓喜を秘める。 |
||
| 袁小良 | 武松 | 「嫂嫂,想俺武松景阳岗醉打猛虎, 仅不过偶图侥幸罢了」 |
「義姉さん、虎退治は酒の勢いで、 偶然の幸いにすぎないんです」 |
| 王瑾 | 潘金蓮 | 「叔叔客套了,请问叔叔,如今耽搁何处?」 | 「まあ、他人行儀なのね。 ところで武松さん、今泊まり先はどこ?」 |
| 袁小良 | 武松 | 「衙门之中」 | 「県庁内です」 |
| 王瑾 | 潘金蓮 | 「衙门之中?」 | 「県庁内ですって?」 |
| 袁小良 | 武松 | 「正是」 | 「そうです」 |
| 王瑾 | 潘金蓮 | 「哎!叔叔啦!」 | 「まあ!武松さんたら!」 |
| 王瑾 | 唱 (唄い回し) |
你们久别重逢亲手足, | あなた方は長い別離の後の水入らずの再会、 |
| 怎能够让你单身独宿在衙门中。 | なぜ県庁に一人住まいさせることが出来るの。 | ||
| 王瑾 | 潘金蓮 | 「请叔叔住到家中,待愚嫂也能略尽照顾之责」 | 「家にいらっしゃい。不肖私がお世話します」 |
| 袁小良 | 表 (地の文) |
大郎开心,讲得有道理。 | 武大郎、晴れ晴れとした表情で それが良いと勧めます。 |
| 袁小良 | 武大郎 | 「好兄弟,你嫂嫂的话讲得真对, 还是住到家中来, |
「武松、こいつの言うとおりで、 やはり我が家へ来い、 |
| 否则你住在衙门中,做阿哥要不放心的。 | お前が県庁内に住んでいると、 俺は心配なんだ。 |
||
| 夜里要睡不着的,大嫂,这就叫:」 | 俺は心配で夜も眠れないよ。 なあ、おまえ、これこそ―・・ 」 |
||
| 袁小良 王瑾 |
唱 (唄い回し) |
合家欢聚乐融融。 | 一家団欒すればくつろげる。 |
| 袁小良 | 表 (地の文) |
武松心里真激动。兄嫂一片真情厚意。 | 武松は本当に感激している。 兄嫁の真心、思いやりに。 |
| 袁小良 | 武松 | 「既蒙兄嫂不弃,俺武松尊命便了。」 | 「義姉さんのご厚意を無にせぬよう、 俺、武松はご指示通りさせて頂きます」 |
| 袁小良 | 武大郎 | 「好极哉!大嫂呀!好兄弟回来端正床辅」 | 「良かった!良かった!おい! 弟が帰って来たんだ。布団敷いてやれ」 |
| 王瑾 | 潘金蓮 | 「明白了!」 | 「はい、わかりました!」 |
| 袁小良 | 武大郎 | 「快点准备酒菜款待好兄弟」 | 「早速酒肴の仕度だ、ご帰還祝いだ」 |
| 王瑾 | 潘金蓮 | 「知晓了!」 | 「承知しました!」 |
| 袁小良 | 武大郎 | 「啊呀!讲了半天,怎么还在门口, 请好兄弟快点到里面坐坐」 |
「なんだ!立ち話ばかりで、まだ門口か、 武松、早く中へ入って来て坐れ」 |
| 王瑾 | 潘金蓮 | 「是。叔叔请!」 | 「そうよ、武松さん、どうぞお先に!」 |
| 袁小良 | 武松 | 「嫂嫂请!」 | 「義姉さんこそどうぞ!」 |
| 王瑾 | 潘金蓮 | 「叔叔请!」 | 「いえ、武松さんこそ!」 |
| 袁小良 | 武松 | 「嫂嫂请!」 | 「いえいえ、やはり義姉さんこそ!」 |
| 袁小良 | 表 (地の文) |
选回到此结束。 | 虎退治の勇士、武松と兄嫁、潘金蓮の出会いという、長い「水滸伝」より、抜き読みの一席。 |
| 完 | |||